地域包括ケア病棟の複数減算をシミュレーション!

地域包括ケア病棟つの減算を分かりやすくまとめてみました!

地域包括ケア病棟に求められる機能は

①急性期後患者の受け入れ(post acute機能)
②自宅等で急性増悪した患者の受け入れ(sub acute機能)
③在宅復帰支援

3つの機能です。

2022年度診療報酬改定は、この3つの機能を適切に果たしていない場合、入院料・管理料がさらに「減算」される非常に厳しい改定内容となっています。

以下、過去記事参照

2022診療報酬改定情報~地域包括ケア病棟の具体的な改定が出ました!~
地域包括ケア病棟の改定11のポイントを整理しています! 厳しい数値設定になっているのでしょうか?

今回はこの「減算」の内容と意味について、実際に計算しながら確認していきたいと思います。

7つの減算のまとめ

地域包括ケア病棟の施設基準と合わせて見ていきます。

①~⑥は以下の数字と同じようにしております。

施設基準と合わせて見ていくと頭の整理がつきますね。

①自院の一般病棟からの入院が多い場合は減算(入院料2・4)

地域包括ケア2・4において「自院の一般病棟から転棟した患者割合が6割以上」の場合

入院料減算「100分の85

今まで400床以上の保険医療機関が対象でありましたが、200床以上に変更となり、減算対象病院が増えました。

②自宅等からの受入が少ない場合は減算(入院料、管理料1・3)

地域包括ケア1・3において

「自宅等からの入院患者割合が2割未満」の場合

自宅等からの緊急入院患者受入数が3か月間で9人未満」の場合

「在宅医療等の実績2つ未満」の場合

入院料減算「100分の90

③自宅等からの受入が少ない場合の減算拡大(入院料、管理料2・4)

地域包括ケア2・4において

「自宅等からの入院患者患者割合が2割以上」

「自宅等からの緊急入院患者受入数が3か月で9人以上」

「在宅医療等の実績つ以上」

のいずれか1つを満たせない場合

入院料減算「100分の90

④在宅復帰率が低い場合は減算(入院料、管理料3・4)

地域包括ケア1・2の在宅復帰率72.5%以上」に引き上げ
地域包括ケア3・4の在宅復帰率70%未満」の場合

入院料減算「100分の90

⑤入退院支援の体制不備の場合は減算(入院料、管理料1・2)

許可病床100床以上の地域包括ケア1・2において、入退院支援加算1の届出を行っていない場合

入院料減算「100分の90

⑥療養病床の地域包括ケア病棟の減算

療養病床の地域包括ケア病棟等において

「自宅等からの入院患者受入割合が6割以上」

「自宅等からの緊急入院患者の受入が3月で30人以上」

「救急医療体制が整備されている」

のいずれも該当しない場合

入院料減算「100分の95

⑦初期加算の減算と増点

急性期病棟からの患者受入を評価する「急性期患者支援病床初期加算」について、自院の一般病棟からの転棟患者は150点から50点に減算

増悪した在宅患者受入を評価する「在宅患者支援病床初期加算」について、老健施設からの入棟については300点から500点に増点し、その他施設・自宅からの入棟については300点から400点に増点

複数減算に該当する場合の減算シミュレーション

このように「7つの減算」ルールが導入されました。

それでは複数の減算規定に該当した場合、どの程度減算になるのか簡単に試算してみます。

※2022年3月4日通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」では「複数減算ルールに該当する場合には減算も複数適用する」とされています。

※複数減算項目に該当する場合は、減算計算した後に、小数点以下第1位を四捨五入した点数を算定することとなっています。

とても分かりにくいので減算一覧表を作成しました。

この表に沿って減算がどの程度の減収になるのか見ていきたいと思います。

極端な例として減算幅が大きくなる例を出しています。

【状況】
・地域包括ケア病棟入院料2を算定している400床の病院
・400床のうち地域包括ケア病棟は100床保有
・地域包括ケア病棟の区分は療養病床ではなく一般病床
・地域包括ケア病棟へ入棟する患者の割合は自院の一般病棟からが100%
・したがって自宅等からの入棟はなし
・毎月地域包括ケア病棟には30名の入棟患者(年間360名)
・平均在院日数は60日
・在宅医療等の実績はなし
・入退院支援加算1の届出はなし

それでは上記状況の減算を計算していきます。

①自院の一般病棟からの入棟割合100%のため、地域包括ケア病棟入院料2,620点から100分の85の減算となる

2,620点×0.85=2,227

②自宅等からの入棟なし、在宅医療等の実績がないため、さらに100分の90の減算となる

2,227点×0.9=2,004.3

③許可病床数100床以上であり、入退院支援加算1の届出がないため、さらに100分の90の減算となる

2,004.3点×0.9=1,803.87点 小数点以下を四捨五入し1,804点となる

上表の黄色部分で表示している部分が複数減算に該当します。

患者1人当たりの入院期間の減算分は?

(入院料2)2,620点-(減算後入院料)1,804点=(減算分)816

平均在院日数60日であるため、816点×60日=48,960

患者1人当たり48万9,600円の減収となる

初期加算分の減算は?

さらに初期加算の減収分を計算します。

初期加算のうち、「急性期患者支援病床初期加算」と「在宅患者支援病床初期加算」は減算されるケースと増点されるケースがあります。

下表の数字のうち右側にある点数は従来の点数を記載しています。

「急性期患者支援病床初期加算」は従来150点。

「在宅患者支援病床初期加算」は従来300点。

今回のシミュレーションの病院例では、この初期加算は減算・増点のどちらなのでしょうか?

本シミュレーションの病院は400床以上であり
自院の一般病棟からの転棟患者が100%
毎月30名、年間360名が転棟してくる状況である

したがって上表の黄色部分が本シミュレーションに該当している部分になります。

従来、1日当たり1人の該当患者から150点算定出来ていた急性期患者支援病床初期加算は50点の算定と減算になるため、従来より100点の減算となります。

自院からの入棟患者が100%のため「在宅患者支援病床初期加算」は算定できません。

この初期加算は入棟から14日間算定可能なため、

減算100点×14日間=1,400点/人

1,400点×年間入棟患者360名=504,000点 

年間約500万円の減収となります。

まとめ

本例は極端な例かもしれませんが、患者1人当たり約50万円の減収初期加算年間500万円の減収はかなりのダメージになるとお分かりいただけたかと思います。

この厳しい複数減算ルールは「地域包括ケア病棟の3つの役割をを果たしてほしい」という意図であり、果たさない場合は「経営面の見直しが必要なほど減収となるため、当該入院料から退出してほしい」という厚労省のメッセージと受け取れます。

基本的に減算は認めないよ、と言っているようなものです。

あー厳しいですね。

地域包括ケア病棟が自院包括ケア病棟になってしまっている、という皮肉たっぷりのメッセージですね。

対策としては減算しないように、自院からだけでなく地域からの入棟を促していくことですね。

すでに対策をとられている病院も多いかと思いますが、複数減算に該当しないように頑張ってください!