介護報酬改定の議論が本格化してくる時期になりました。介護給付費分科会もペースを上げて開催し、詰めた話が出てくるのではないでしょうか。今回は令和2年10月22日に開催された介護給付費分科会の資料から、訪問看護ステーションにおける理学療法士等の従事状況について興味ある資料の提示と現在の課題について述べられておりましたので、簡潔に要点のみまとめていきます。訪問看護ステーションに従事する理学療法士等の人数は増え続けているようです。
訪問看護ステーションの理学療法士等の割合
訪問看護ステーションに従事する理学療法士等(常勤換算)の割合は、20%未満の事業所は66.6%となっています。3分の2が20%未満の従事状況ということは、訪問看護ステーションの理学療法士等には理学療法士等が相当数の割合従事している可能性を示唆します。下図をご覧ください。
20%以上理学療法士等が従事している割合は年々増えていっています。中には、80%以上が理学療法士等です、という事業所が0.4%であり、60~80%未満と理学療法士等の人数が多い事業所は4.3%となっています。
理学療法士等の人数が10名以上従事しているという事業所を平成21年と平成29年で比較すると、20事業所から205事業所と約10倍に増加しています。
訪問看護ステーションにおける理学療法士等の現状
訪問看護ステーションでは理学療法士等が行う訪問リハビリ等は、訪問看護の一環として認められています。平成24年までは看護師が行う訪問看護費の割合が80%程度と高い状況でしたが、平成24年から事態は一変し、理学療法士等が行う割合が40%を超えるようになってきております。特に要支援者に限定すると、理学療法士等が行う割合は約70%にも増加しています。
訪問看護と訪問リハビリの内容
・訪問看護ステーションが提供する訪問看護の一環として行う訪問リハ
・病院や診療所等が提供する訪問リハ
この両者の違いを訓練内容から比較してみます。
上図を見てみるとお分かりのように、ほぼ同じ内容で訓練を行っています。
訪問看護を受けている要介護者の状態
下図の青色は主に看護職員による訪問
下図の赤色はリハビリ職員による訪問
医療的処置・ケアと目的で比較
「浣腸・摘便」「精神症状の観察」「服薬援助」では青色の看護職員による訪問の方がリハビリ職員の訪問よりも2倍以上高くなっています。一方、リハビリ職員の方が多い項目は「疼痛の管理」「いずれもなし」の項目であり、このことからもリハビリ職員が行う訪問は、医療的処置・ケアがない方に集中していることが分かります。
右の訪問の目的で比較すると、リハビリ職員の訪問目的は「運動器の機能向上」「ADLの維持・低下防止」が高くなっています。
訪問看護を受けている要支援者の状態
要支援者に限って見てみると、その差はより顕著となり、リハビリ職員が訪問している医療的処置・ケアが必要ない方の割合は53.7%となっています。
まとめ
厚労省は訪問看護の現状として「訪問看護の一環としての理学療法士等による訪問が増加している。特に要支援における理学療法士等による訪問の割合が高い」と説明しています。
また、リハビリテーション専門職による訪問看護を主に提供されている利用者は、訪問看護の目的として「運動器の機能向上」や「ADLの維持・低下防止」が高い一方、医療的処置・ケアが少ないことをデータにて提示しています。
これについて委員から「理学療法士等による訪問看護の状況をみると、今後、訪問看護が本来の機能を十分に果たせられなくなることが危惧される。看護職員割合の人員基準への追加、看護職員の訪問割合が著しく低い事業所に対する減算、理学療法士等が週に複数回訪問する場合の一定回数以降の減算など、本来あるべき姿に誘導してくべきだ」と意見が上がっています。
理学療法士等が行う訪問看護には逆風となっています。そもそも訪問看護と訪問リハビリテーションは目的が異なります。その異なる目的を「訪問看護の一環」として一括りにしていることが、本来あるべき姿からの逸脱につながっています。
また、理学療法士等の人数増加により、病院から独立し、訪問看護ステーションを立ち上げる方も増えているという現状もあります。そのような訪問看護ステーションは、自身の得意な訪問リハビリを提供する割合が高くなっているという情勢も加味して考えていかなければなりません。
開業権のない理学療法士等が独立すれば、このように理学療法士等が行う訪問看護が増えていくのは必然です。訪問看護ステーションと訪問リハビリステーションは分けて考えていく時代になってきているのではないでしょうか。
頑張れ!訪問看護!
頑張れ!訪問リハビリテーション!