利用者・家族等からのハラスメントは増えているのか?

介護部門のハラスメントとして、利用者・家族等からのハラスメントが増えているのではないか?と感じられている方もおられるのではないでしょうか。サービスを受ける側とサービスを提供する側という立場上、お金を払う側とお金をもらう側という関係性が成り立ちます。お金を払っているのだから、ものを言わせてもらうよ。ということ自体は間違っていないと思いますが、その意識が強すぎると「上下の立場」で物事を見てしまいがちになります。対等な立場って言葉は簡単ですが、実際は対等ではない関係性が存在しています。

施設管理者はハラスメントが増えていると思っているのか?

ハラスメントは以前よりも増えているのか、減っているのか。施設管理者がどのように感じているのかは興味があるところです。

介護老人福祉施設 増えている19.6% 減っている3.6

定期巡回・臨時対応型訪問介護看護 増えている24.2% 減っている12.1

この2施設は「ハラスメントが増えている」と感じている割合の方が多くなっています。

特定施設入居者生活介護 増えている5.9% 減っている14.7

小規模多機能型居宅介護 増えている10.9% 減っている17.2

この2施設は「ハラスメントが減っている」と感じている割合の方が多くなっています。

その他の種別サービスは増えていると減っているがほぼ同数となっています。

施設管理者の感じ方と実際の発生状況の乖離

施設管理者が「ハラスメントが増えている」と思っている割合と実際の状況には大きな乖離があるようです。施設管理者は十分に現場を把握できていません。

全種別サービスにおいて、管理者が思っているよりも実際のハラスメントは増えています。種別によっては倍以上の乖離があります。なぜこのような乖離が生まれているのでしょうか。管理者はどのようにハラスメントを把握しているのでしょうか。

ハラスメントの把握方法

管理者はハラスメントをどのような方法で把握しているのか、大きく2つの姿勢があるように思います。

赤色で分けられている項目は、「職員からの報告で把握」「会議等を通じて把握」「窓口で把握」というように管理者は待ちの姿勢で把握している項目です。

一方、青色で分けられている項目は、「アンケートを実施」「人事面談を実施して把握」「ハラスメントチーム」「担当職員と同行」「記録を見て把握」というように管理者は自らの行動で把握する姿勢です。

どちらかというと、待ちの姿勢で把握している割合が高くなっています。もう少し管理者は自ら把握していこうという行動をとらなければ、乖離している現状は変わらないのではないでしょうか。

ハラスメントに対して準備していること

ハラスメント防止に対してどのような準備をしているのでしょうか。ここで着目したいのは施設外からの支援の導入です。

「相談できる外部機関がある」「アドバイスをくれる外部機関」10%程度

「カウンセリングを受ける体制」20~30%程度

まだまだ自施設で対応しているところは多いようです。EAP機関が日本全国の会社や事業所等に入っていくような文化が広がれば、上司だけの負担にならずにハラスメント対策がとれるようになるかと思います。

ハラスメント防止に対する課題

ハラスメントの状況把握やハラスメント防止に対する準備は、真の意味では困難を極めるものとなっています。困難を極めるといっても具体的に何が難しいと感じているのでしょうか。ハラスメント防止に対する課題をまとめています。

最も多い課題は「ハラスメントかどうかの判断が難しい」60%前後となっており、起こった事案がハラスメントに該当するのか、状況判断を含めて確認し、的確な判定を下すことに対して難しさを感じているようです。また、ハラスメント予防・解決のノウハウがないことも課題としてあがっています。先ほどの外部機関の支援により、ハラスメントの判断や予防・解決のノウハウをアドバイスできる環境整備が望まれます。