AIケアプラン作成が現実的になる?!~ホワイトボックス型AIによるケアプラン作成支援に関する調査研究が動き出しました!~

ケアプランがAIで作成されればケアマネの業務量は削減されるのか?

この疑問は近いうちに解決されるのではないかと思われます。なぜかというと、厚労省は2019年度にAI活用によるケアマネジメントの業務効率等の効果検証を実施し、2020年度はケアプラン作成のアルゴリズムによる可視化、2022年度はAIモデルの実証評価を予定しているからです。

AIによるケアプラン作成には賛否の声があるのも事実です。今回は時代の流れにのる形で、どのような形であればAIケアプラン作成が良いものになるのかをまとめていきたいと思います。

アナログ問題と厚労省の動き

介護部門における業務効率の問題点として長く指摘されてきたことは「アナログ問題」です。医療現場では電子カルテの普及率は年々向上しています。一方、介護部門では紙面でのやりとりやFAXが多く、手間のかかる作業が発生していることが指摘されていました。オンラインでデータ連携しケアプランの共有が可能になれば、不要な書類は削減でき、必要な書類の作成も効率化が図れます。

そのような問題が山積している中、厚生労働省は9月25日、令和3年度予算概算要求について公表しました。この概算要求は9月30日に財務省に提出され、一般会計の要求額は令和2年度当初予算額とほぼ同額の32兆9,895億円となっていますが、新型コロナウイルス感染症への対応など「緊要な経費」は別途要望するものとし、要求額が明示されず、予算編成過程で検討することとなっています。厚生労働省は次の項目を「緊要な経費」として打ち出しています。

①介護サービス事業所と居宅介護支援事業所との間でのケアプラン共有システムの構築

介護サービス事業所等の業務効率化を図るため、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で交わされるケアプランのデータ連携を可能にするためのシステム整備

FAXなどのアナログ問題はこれで解決に近づけるかもしれませんね。

②介護サービス情報公表システムの改修

文書作成等に関する負担軽減を図るため、既存の介護サービス情報公表システムを改修し、オンライン申請を見据えた機能を拡充

既存の介護情報システムを改修して少なくとも2度手間は省いてもらいたいものですね。

ケアプラン有料化について

介護サービスを利用する際は、作成したケアプランを自治体へ提出します。ケアプランは利用者本人が自ら作成することもできますが、一般的には担当のケアマネジャーが作成します。そのケアプラン作成について大きな動きがありました。

2018年に財務省が提案した「ケアプランの有料化」です。ケアマネの業務内容の評価機能が高まり、介護給付も抑制でき、社会保障費の削減につながることをメリットとして挙げられました。しかし、大阪社会保障推進協議会の調査によると、ケアプラン作成業務を担当するケアマネの88.1%が有料化に反対するという結果が出されています。

本調査は、11月7日から15日に大阪市発行「ハートページ2019年版」に掲載されている984居宅介護支援事業所に対して、介護保険見直しの中で検討されているケアプラン有料化について、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがどのように受け止めているか、ケアプラン有料化の予測される影響等について、FAXでの調査を行い312件の回答を得ました(回収率31.7%)。

『ケアプラン有料化(居宅介護支援への利用者負担導入)問題調査結果』(大阪社会保障推進協議会)の資料を基に作成

ケアマネの方々はケアプラン有料化に対しては否定的に捉えている結果となりました。

AIケアプラン作成について

ケアプラン有料化は下火になりましたが、AIケアプラン作成はどうでしょうか?厚労省は今後の予定をR4年度まで示しています。

その名も「ホワイトボックス型AIによるケアプラン作成支援に関する調査研究」

ケアマネの思考フローの可視化を目指し、AIモデルの実証評価までを計画されています。

AIが過去のデータと利用者の思い等を勘案し、最良と思われるケアプランを数案作成。その数案のプランをケアマネが利用者に説明し、利用者は自分で選択したケアプランを選べる。このような流れであれば、利用者の意向も汲み、ケアマネの業務も減り、AIの特徴を活かせる、三者良しの流れになるのではないかと考えます。

利用者の意向を汲めないケアプランであれば機械的で血の通ったプランではありません。またAIがケアマネの職務を取って変わることもありません。十分な説明と納得は人であるからこそできるものであるからです。

AIにケアの真似はできません。AIにケアマネはできません。

すでに2018年にAIを使用したケアプラン作成支援サービス「MAIA」が登場しました。今後この分野は衰退産業ではないため、様々なものが出てくる可能性は大いにあります。自治体レベルでも効果検証を実施しているようです。(宮崎県都城市、福岡県福岡市など)

AIケアプランが嫌厭される可能性

新しいものは受け入れられるまで時間がかかるものです。しかし、業務効率が良くなり、機械の力を借りてでも最良のケアプランが作成できるのであれば乗らない手はないかと思います。

私は介護部門で勤務していないため、実際のところは良く分からないというのが本音です。そこで敢えてAIケアプランが嫌厭される可能性について考えてみました。実際に介護現場で働いていませんので、あくまでも可能性ということで見てください。

①仕事がなくなる不安

AIケアプラン作成が本格稼働すると、事業所内にケアマネジャーの人数制限がかかるのではないかという漠然とした不安から嫌厭される。

⇒安心してください。AIにケアの真似はできません。AIにケアマネはできません。

②必要以上のケアプラン作成を余儀なくされている事業所

法人からの圧力で限度額ギリギリまで自法人内のサービスを利用するようにケアプランを作成していた事業所は、AIケアプランによってサービス提供量が少なくなり収入減になるため嫌厭される。

この件に関しては以下の調査報告をご覧ください。

法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた経験(周囲から見て)

「よくある・ときどきある」と答えた割合40.2

このような事業所はAIケアプラン作成が圧力の抑制につながるのか?うーん。難しいかもしれませんね。経営目線でケアプラン作成を余儀なくされているケアマネジャーの方は相当数いらっしゃるようです。心中お察しいたします。

また上図よりも最新のデータがあったので添付いたします。

前回のデータと比較すると、法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた経験(周囲から見て)

「よくある・ときどきある」と答えた割合40.2%⇒41.7

1.5%高くなっています・・・心中お察しいたします

③利用者の身体状況に特化したケアプラン

利用者の意向や思い等、心理状態を反映させたケアプラン作成がAIにできないのではないかという懸念による嫌厭。

⇒ケアマネの思考フローをAIがどのような学習するのかによって改善できる可能性あり。

④イレギュラーな問題に対する対応不足

AIに頼りすぎるとイレギュラーな問題に対して即座に対応できないのではないかという嫌厭。どうせチェックするのならば、一からケアマネが作成した方が効率が良いのではないかという意見。

⇒参考データの蓄積によってAIがイレギュラー事項も処理できるようになる可能性あり。

等々、新しいものの導入は多くの問題があろうかと思います。ケアマネの業務は大変な労力です。お金にならない利用者からの依頼に対応している方々も多くいらっしゃると調査結果からも明らかになっています。その献身的な姿勢に敬意を表します。だからこそ、ケアマネの方々の業務量を削減できるAIケアプランは体系化してほしいと願っています。

頑張れ!ケアマネ!

頑張れ!ホワイトボックス型AI!