2021介護報酬改定で施設系サービスに新設された「自立支援促進加算」は入所者1人当たり300単位/月算定可能となっています。
入所者100人で計算すると約30万円の増収となります。
私は介護施設で働いていませんので、この自立支援促進加算について深く知りませんでした。
30万円の増収に見合う加算なのか?入所者の自立支援を促進する本加算はアウトカム加算なのかプロセス加算なのか?
名称だけを見ると「どの程度自立を促せたのか」というアウトカムの加算かと思いますがどうでしょうか。今回は「自立支援促進加算」についてまとめていきます。
算定要件は?
算定要件は以下のイ~二の4つとなります。
イ:医師の関与
イ:医師が入所者ごとに、自立支援に係る医学的評価を施設入所時に行うとともに、少なくとも六月に一回、医学的評価の見直しを行い、自立支援に係る支援計画等の策定等に参加していること。
いきなりハードル高そうですね。医師が全入所者に。しかも入所時に。年2回の見直し。
ロ:多職種で策定し実践
ロ:イの医学的評価の結果、自立支援促進の対応が必要であるとされた入所者ごとに、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員、その他の職種の者が共同して、自立支援に係る支援計画を策定し、支援計画に従ったケアを実施していること。
多職種が関わることは大事ですよね。自立支援を促すためには、多職種で計画し実践していくことは当たり前になっています。
問題は加算が増えると計画書が増えることです。何枚多職種で計画書を作成すれば良いのでしょうか。
効率化を図るのであれば重複資料を避け、「総合○○計画書」で全てを網羅できるウルトラスーパーハイパー計画書が欲しいところです。
ハ:支援計画の見直し
ハ:イの医学的評価に基づき、少なくとも三月に一回、入所者ごとに支援計画を見直していること。
医師の医学的評価の見直しは六月に一回。
多職種による支援計画の見直しは三月に一回。年4回。春夏秋冬の年間行事ということですね。
ニ:LIFEによるデータ提出
ニ:イの医学的評価の結果等の情報を厚生労働省に提出し(LIFE)、自立支援促進の実施に当たって、当該情報その他自立支援促進の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。
ここでもきました。LIFE。データ提出はいたるところで出てきます。もはや厚労省のゴリ押しデータ提出加算です。
解釈通知
自立支援促進加算は、寝たきりなど重度化を予防するための取組を評価する加算として新設されました。
自立支援に係る医学的評価や、自立支援に係る支援計画等の策定等への参加などの面で、重度化防止の取り組みに関する医師の関与が求められていると同時に、多職種によるアセスメントを求めています。
また「画一的・集団的な介護、あるいは個別的ではあっても画一的な支援計画による取り組みを評価するものではない。」「個々の入所者や家族の希望に沿った、尊厳の保持に資する取り組み、本人を尊重する個別ケア、寝たきり防止に資する取り組み、廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止のための自立支援の取り組みなど、特別な支援を行っている場合に算定できる。」と解釈通知で説明されているように、個別性を重視した評価・支援計画を求めています。
医学的評価と支援計画
医師の医学的評価と多職種の支援計画に用いる様式は以下のとおりです。
(別紙様式7)Wordファイルのダウンロードはこちらからどうぞ。
解釈通知では医学的評価について「その時点の自立支援に関する評価に加え、特別な支援を実施することによる入所者の状態の改善可能性などについて実施すること」と説明しています。
改善の可能性が期待できるかどうかは下記の(6)の赤枠に記載します。
赤枠部分を見ていきます。
改善したかどうかではなく、あくまでも計画を重視したプロセス評価となっています。
支援計画については、様式の全ての項目を埋めるよう求めるとともに「個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成し、画一的な支援計画とならないよう留意すること」と注意喚起しています。
とは言いながらも、必要な支援計画を4つからしか選択できなかったりと多少の矛盾がある様式となっています。
しかし、離床時間の過ごし方等も具体的に計画するような欄があるため「入所者の1日の生活を見る」視点は求められている様式となっています。
支援計画の考え方は以下のとおりです。
・寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持、立ち上がりを計画的に支援する。
・食事は本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いるなど、自宅などでの従前の暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好などへの対応も画一的ではなく、個人の習慣や希望を尊重する。
・排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用すること。特に多床室では、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。
・入浴は特別浴槽ではなく一般浴槽とし、回数やケアの方法も個人の習慣、希望を尊重する。
・生活全般にわたり、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする。
・リハビリテーション、機能訓練の実施については本加算で評価するものではないが、医学的評価に基づき必要な場合は、入所者本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行うこと。
様式としては、具体的な~、であったり、離床時間は○時間、等という表記になっています。
画一的ではなく『個別性』が問われています。
改定Q&A
最後に現在(2021.4.20時点)Vol.6まで出されているQ&Aの中から、自立支援促進加算に該当する項目を抜き出しました。
2つ出されています。まず1つ目は入浴に関してです。入浴は一般浴槽を使用することとされていますが、一般浴槽を使用困難な場合の取り扱いについてのQ&Aです。
2つ目は既に施設に入所している方の取り扱いについてのQ&Aです。
まとめ
本加算は新設された加算です。どの程度の算定率になるのか興味があるところです。
医師の関与が増えた点や計画書の労力等、1人当たり300単位の旨味をどう捉えるのかによって、算定の有無は分かれそうですね。
個人的には自立支援促進加算がアウトカムを求めるものではないことには好感が持てますが、もう少し計画書の効率化を狙っても良かったのではないかとも感じました。
入所者の方の自立が促進されるようなものであれば良いですね!