本当に任せることで人は成長するのか?

リーダシップ研修や管理者研修など、上役に対する研修でよく耳にする言葉です。「仕事を任せることで責任感が芽生え人として成長する。」「任せることで仕事のノウハウを覚え成長を促せる。」これって本当でしょうか?任せても成長しない人もいるのではないでしょうか?成長は「任せる」ことよりも、任せた後のモニタリングが重要となります。

任せるとは蒔かせること

任せることは上司から部下に対する期待の裏返しと言っても良いかと思います。全くできない人に任せることはできません。この部下だったら成果をあげてくれるという見込みを加味して任せています。しかしこの期待は一方通行になっていないでしょうか。「任せたからあとは成長してね。」という一方通行の任せ方は成長を阻害してしまいます。部下の成長を期待しているのならば、成長の種が部下に蒔かれて芽を出しているかのモニタリングが重要となります。いつ水を与えれば良いのか、どんな栄養を与えれば良いのか、周りに栄養を奪っている雑草はないのかなど、種が成長するためのモニタリングは重要です。人と植物は全くのイコールではありませんが、共通する考えもあるかと思います。

任せるとは任せた相手に成長の種を蒔かせることです。

任せる=蒔かせる

言葉遊びってますね。

心理学的に任せる効果を考える

任せることでどのような良い効果があるのでしょうか。

①主体性が育つ
②モチベーションが高まる
③失敗を経験できる
④仕事遂行のノウハウを学べる
⑤責任感がつく

上記以外にも数多くあるかと思います。任せることで得られる効果を心理学的観点から考えていくと「安心感を得られる」という点が最も効果が高いのではないかと思います。。任せると任せられた側は「役割を与えられた」ことになります。職場での問題によってカウンセリングを受けられる方が感じられている理由の一つに「職場に居場所がない」という理由があります。居場所がないから苦しくなって逃げだしたい、行きたくないという心理状況になります。任せることで「役割を与え」、ここにあなたが必要だよというメッセージを送ることが出来ます。役割があれば居場所を感じ、居場所があれば安心感を得られるようになります。

任せるが負かせるにならないように

しかし任せることで役割を与え、居場所を感じ、安心感が得られる人ばかりではありません。与えられた役割をプレッシャーに感じ役割が重荷になる方もいます。その重荷が心を苦しめプレッシャーに負けてしまう人もいます。

任せることが負かせる

ことになってしまわないようにプレッシャーを半減させる関わりが必要になってきます。プレッシャーを半減させる手段はいくつもあろうかと思いますが、私が上司に言われて肩の力が軽くなった言葉は責任の所在確認でした。プレッシャーの根本は「失敗したらどうしよう。」「この案件が私のせいでダメになったらどうしよう。」という結果への不安です。その結果への不安を軽くするのが責任の所在確認です。

行動責任は任せられた側。結果責任は任せた側。

ということを明確に示してあげることです。私が上司から仕事を任せられたときに言われてカッコイイなと思った言葉が「うまくいかなくても私が責任持つから自由にのびのびやっていいよ。」です。続けて「自由にのびのびやるという行動責任は果たしてね。」と伝えてくれました。いつか私が上司になった時にこの言葉を言おう言おうと心に刻んだ言葉です。「任せられた仕事に真剣になっても深刻にはならないでね。」と最後に伝えられ、私のプレッシャーは消し飛びました。さらに「よし、やってやるぞ。」とプレッシャーに勝つことが出来ました。任せられることでプレッシャーに負かせられるという連鎖を言葉一つでプレッシャーに勝たせるように導いてくれたのです。

任せることは責任を与えること

今思えば、責任を与えてくれたことも重要だったかと思います。過保護にしないためにも責任を与えてくれました。それは「自由にのびのび真剣にやる」という行動責任です。責任が全くないものを任せられても大きな成長にはつながりにくいものです。責任は俺が取る。とだけ言う上司と結果責任は私がとるけどこの部分は責任をもってやってほしいという上司のもとでは部下の成長が大きく変わってくるものです。

まとめ

・任せるとは部下に成長の種を蒔かせること。

・任せることがプレッシャーに負かせることになってはいけない。

・任せたあとのモニタリングが重要。

・任せることは責任も与えること。

・過保護な状況で得られる成長よりも責任下で得られる成長の方が大きい。