『後悔の有効活用』

後悔、悔いが残る。

言葉としてはネガティブな印象が強い言葉です。こうすれば良かった。ああすれば良かった。など以前取った言動を後々に振り返ってみて反省することを指します。やはり心に残る出来事に対して後悔することが多いようです。この「悔い」ですが本当にネガティブな言葉なのでしょうか。今回は「悔い」についてまとめていこうと思います。

なぜ悔いるのか

人はなぜ悔いるのでしょうか。自分の取った行動に納得ができず悔しくなり後から考えると当時の最良の行動は何だったのか模索している状況下において「悔い」が現れます。悔しくなって振り返って反省する時に悔いるのです。反対に振り返らない場合は「悔い」が現れることはありません。つまり自分の取った行動を振り替えようとする「向上心」が引き起こす感情と言い換えることが出来ます。

後悔から学ぶ

当時流行っていたアニメ映画を見に行くため一人で初めてバスに乗った時のことです。小学校4年生でした。行先は何度も頭の中でシュミレーションしていました。○○行きのバスに3番乗降口から乗る。10時15分到着のバスに乗って10時42分にどこどこに到着して~という風に乗り間違いがないように何度も頭の中で練習しました。さらに忘れないように紙に書いてポケットに忍び込ませていました。さぁ、いよいよ本番です。3番乗降口に着きました。予定よりも30分前の9時45分です。緊張していたのでしょうね。予定では10時15分到着のバスに乗るようにしていましたので、何台も通り過ぎるバスを眺めていました。しかし私の頭の中は10時15分。その時を今か今かと待っていました。さぁ、ようやく10時15分です。しかしバスの気配はありません。徐々に不安が押し寄せてきます。3番乗降口の3という数字を何度も確認しました。待てど暮らせどバスは来ません。実は3番乗降口は2か所あったのです。しかし当時の私は知る由もありません。10分が過ぎ、30分が過ぎ、目当てのバスを今か今かと待っていましたがいつまでもバスは来ません。とうとうバスを諦めて帰ることにしました。家に帰る途中、公園によりベンチに座りながら時間が過ぎるのを待っていました。3時間程でしょうか。子供ながらに映画を見終わる時間とバスの往復時間を計算してあたかも映画を見て帰ったような振る舞いで家に帰りました。「ただいま。」帰ると母親が出迎えてくれました。「おかえり。」と言いながら私の眼を優しくじっと見つめます。「映画、良かったよ。」と言いながらも、あれ?溢れてくる涙が止まらなくなりました。なんだ、この涙は。止まらない。一体何が起きているのだろう。自分の感情が抑えられないのです。バスに乗れなかった悔しさ。一人でできなかった恥ずかしさ。公園で時間をつぶした惨めさ。親に知られたくない子供ながらのプライド。いろいろな感情が入り混じった涙。悔しかった。情けなかった。母親は「大丈夫。」と一言だけ。後から聞いた話ですが母親は心配してバス停までついてきていたようです。「そこの乗降口じゃない。」と何度も思いながらも声をかけず見守っていたそうです。私が公園で時間をつぶしている間も、公園の奥から見守っていたようです。私以上に母親も辛かったのではないでしょうか。子供ながら気丈に振舞おうとする子供の行動に何を思っていたのでしょうか。そんな親心も分からず、私は惨めさと情けなさに苛まれていました。でも悔しい。なぜバスに乗れなかったのか。なぜ乗降口で周りの大人に聞けなかったのか。なぜもっと乗降口をリサーチしていなかったのか。なぜ。なぜ。自分の取った行動を振り返り後悔しました。悔しいという感情が自分の行動を振り返り、後悔という感情を生み出したのです。

悔しい⇒後悔。同じ「悔」いう漢字を使っています。この悔しい気持ちがなければ、私はいつまで経っても自分の行動を振り返ることができず、後悔から学ぶ次に取るべき行動変容に至らずにバスに乗れない日々が続いたことと思います。1週間後、母親が再チャレンジの場を設けてくれました。私と一緒に後悔し、どのような行動をとれば良かったのかを一緒に考えてくれました。父親も考えてくれました。後悔は1人より2人で。2人より複数で。

後悔という航海に出ることで、バスに乗って市街に行ける行動範囲が自分の世界が広がりました。後悔は正しい行動に導いてくれる人にとってなくてはならない感情だと痛感しました。決してネガティブではないワードです。

いけない後悔の仕方

後悔が全て良いのかというと、後悔の仕方によっては悪い方に導くこともあるように思います。悔いることは決して悪いことではないのですが、悔いという杭深く心に打ち込むような後悔の仕方は今後の自分の行動変容が起きなくなりがちです。深く心に打ち込んだ杭は、次の行動に移ろうとする際の足かせになり、その場に留まらせようとさせます。私もバスに乗れなくて恥ずかしかったという悔いを心の深くに杭として打ち込んでしまえば、もうバスに乗らないと決断し、その場に留まってしまい、自分の世界が広がることはなかったでしょう。いけない後悔の仕方とは心に深い杭を打つような後悔の仕方かなと思います。

悔いの有効活用

やはり悔いを自分の人生にとって有効活用するためには、悔いから学ぶ部分を模索し自分の行動変容に繋げていくことかと思います。

悔いることは向上すること。

とポジティブに捉え自分の行動のエネルギーにしていくことが重要かと思います。悔いはしてもいいけど杭を残すことは止めたいですね。

あれ?これ名言ですかね。ダジャレですかね(笑)