2022年1月26日に中央社会保険医療協議会・総会が開催され、2022年度診療報酬改定に向けた「個別改定項目」が提示されましたが、回復期リハビリテーション病院にとっては大きな改定ではなさそうです。
個別改定項目に記載されている順に回復期改定のポイントを5点まとめていきます。
- 回復期リハ病棟2022改定の5つのポイント
- ①回復期リハ5を廃止し、現行の回復期リハ6を回復期リハ5に位置づけ、回復期リハ5は●年間に限り算定することができることとする
- ②回復期リハ病棟入院料1~4の重症患者割合を見直し、1及び2については●割以上、3及び4について●割以上とする
- ③回復期リハ1又は3の要件として「公益財団法人日本医療機能評価機構等による第三者の評価を受けていることが望ましい」を新たに盛り込む
- ④「回復期リハビリテーションを要する状態」に「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患または手術後の状態」を追加し、算定上限日数を●日以内とする
- ⑤新たに回復期リハを要する状態に追加された「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」の患者は、リハビリテーション実績指数に算出対象から除外することができる(※ただし3割を超えない範囲は継続)
- その他:特定機能病院において、新たに「特定機能病院リハビリテーション病棟入院料を新設する
- まとめ
回復期リハ病棟2022改定の5つのポイント
①回復期リハ5を廃止し、現行の回復期リハ6を回復期リハ5に位置づけ、回復期リハ5は●年間に限り算定することができることとする
6段階の回復期入院料が5段階となります。
しかし回復期リハ5の算定期間は「●年間に限り」とされているため、2024年改定の時には回復期リハ5も廃止になりそうです。
数年間も回復期リハ5・6のままで質の担保に努めていないと考えられる回復期に対するメスが入りました。
②回復期リハ病棟入院料1~4の重症患者割合を見直し、1及び2については●割以上、3及び4について●割以上とする
まず触れておかなければいけないポイントとして、現状の重症患者の算出の仕方は変わるのか、ということです。
※重症患者:日常生活機能評価10点以上またはFIM55点以下の患者
これにつきましてはFIMのダウンコーティング等に警鐘が鳴らされておりましたが、今回の個別改定項目では触れられていないため、重症患者の算出については同条件かと思われます。
●割以上がどの程度になるのか注目ですね。
③回復期リハ1又は3の要件として「公益財団法人日本医療機能評価機構等による第三者の評価を受けていることが望ましい」を新たに盛り込む
これが今回の目玉になろうかと思います。
まだ「望ましい」という表現ですが2024年には「なければならない」という表現で入り込む可能性が高いですね。
既に公益財団法人日本医療機能評価機構のリハビリテーション病院の受審枠は2022年12月まで埋まっておりました。
先を見据えた受審合戦が進みそうですね。
※受審の状況報告については、毎年7月において、第三者評価の状況等について、別添7の様式●により届け出ること
④「回復期リハビリテーションを要する状態」に「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患または手術後の状態」を追加し、算定上限日数を●日以内とする
今までリハビリが必要な状態であるにもかかわらず、回復期リハビリテーションの対象疾患ではなかったため、行き場のなかった心大血管に対しては光明となる改定です。
かねてから心大血管リハビリテーションは身体機能だけでなく、生活習慣を改善するような総合的な治療が必要だと言われてきました。
回復期の対象疾患に入ることは、生活習慣病の改善にリハビリテーションが重要だという位置づけが明確になったと言っても言い過ぎではないかと思います。
しかしながら対象疾患になったからと言って、多くの回復期リハビリテーション病棟で心大血管疾患を受け入れるには時間がかかりそうです。
その理由として機材の初期投資がかかりすぎるということが挙げられます。
今回の個別改定項目の中の文章に心大血管の算定に関しては「ただし心肺運動負荷試験を入棟時及び入棟後、月に1回以上実施することが望ましい」という一文が明文化されています。
まだ「望ましい」という表現ですが、心配運動負荷試験の導入には数千万円の投資が必要です。
さらに「入棟時及び入棟後、月に1回以上実施」という実施時期や頻度に問題もあるように思えます。
月に1回以上の測定に関しては、測定の手間の問題や患者状態の安定化が重要となります。
入棟時すぐに心肺運動負荷試験をかけられる患者は多くはないのではないでしょうか?
心肺運動負荷試験は一定の負荷がかかります。
その負荷に耐えられる耐用性は入棟時にはまだなく、月に1回以上というのもハードルは高いように思えます。
この「望ましい」という表現が「しなければならない」となると、折角回復期リハの対象疾患に入ったのに心大血管リハを手掛けない回復期リハ病棟は一定数ありそうな予感がします。
その他に心大血管リハの注目点としては、算定上限日数の設定が何日になるのかという点です。
60日・75日・90日が妥当なところでしょうか。
⑤新たに回復期リハを要する状態に追加された「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」の患者は、リハビリテーション実績指数に算出対象から除外することができる(※ただし3割を超えない範囲は継続)
④の心大血管リハの続きですが、新たに回復期リハの対象患者に追加された心大血管リハは、リハビリテーション実績指数の算出対象から3割を超えない範囲で除外できる点も注目しなければいけません。
従来、「入棟時運動項目のFIM点数が高値・低値、認知項目のFIM点数が低値、高齢者」のいずれかは除外対象でしたが、新たに心大血管リハ対象患者も追加されました。
この意味するものとしては、心大血管のリハはそこまでリハビリの効果が見込めない、ということを示唆しているのでしょうか?
麻痺がないため入棟時のFIM点数が高いため、天井効果で実績指数は上がらないという予測なのかもしれません。
もしかすると④の算定上限日数を短く設定するため、実績指数が高くならないことからの除外対象かも知れません。
いずれにしても算定上限日数が何日になるのか、心大血管リハ対象の患者の入棟時FIMは高いのか低いのか、この点が注目されてくるかと思います。
個人的には、
麻痺はないものの動けないため介助が必要で入棟時FIMは高くない。
退棟時はほぼADLは自立になりFIM利得は高い。
FIM利得の予測もしやすく除外選定しやすい。
と考えております。
その他:特定機能病院において、新たに「特定機能病院リハビリテーション病棟入院料を新設する
令和4年3月 31 日をもって廃止予定であった特定機能病院における回復期リハビリテーション病棟入院料は、一転して「特定機能病院リハビリテーション病棟入院料」と位置付けられる見込みです。
この理由として、「現に届出がなされている特定機能病院の病棟において一定程度の役割を果たしていることが確認されることから、特定機能病院におけるリハビリテーションに係る役割を明確化する」とされています。
しかし、新規入院患者のうち5割以上が重症患者であること等、条件が17つほど挙げられています。
以下、特定機能病院の概要
まとめ
これ以外にも支払側の松本委員は「リハビリテーション実績指数の厳格化」を検討することを提案しています。
2020年度診療報酬改定で実績指数は40まで引き上げられましたが、その数値設定やFIM点数のコーディング問題等、指摘される点があるのは事実です。
これに対し、診療側の城守委員は「短冊提案だけでも非常に大きな見直しであり、さらにリハビリ実績指数に手を入れることは到底賛同できない。現場を混乱させてはいけない」と強く反発しています。
今回の個別改定項目の中には「実績指数の厳格化」は記載されておりません。
診療側の反発が通る見込みですね。