FIM利得と在院日数の関係性は?
FIM利得は「入棟時から退棟時までの間にどの程度点数が上がったか」で示される「回復の伸び幅」です。したがって、在院日数が長い方が回復の伸び幅が大きいということは言うまでもありません。しかし、この関係性を理解していない病院幹部は無茶な要望をします。
「在院日数は短くしろ!FIM利得は上げろ!」
(そんな無茶な。)
この病院幹部の要望は果たして無茶なのでしょうか?
結論から言うと、在院日数とFIM利得の関係性が成り立つ患者と成り立たない患者の2種類があると考えています。病院幹部の要望を正しく表現するとこうでしょう。
「在院日数が長くてもFIM利得が高くなる人はそのままで」
「在院日数が長くてもFIM利得が変わらない人は早く退院」
この2種類があることを分かっていないまま「在院日数は短くしろ!FIM利得は上げろ!」と声を荒げている病院幹部が多いとききます。
2種類の患者はなぜうまれるのか?
退院の時期はどのように決まるのでしょうか?一般的な急性期病院は、治療が終了するタイミングで退院の運びとなります。ほぼ医者に決定権があります。一方、回復期リハビリテーション病院の退院の時期はどうでしょうか。全ての病院がそうとは言いません。しかし急性期病院のように医者の決定権は絶対ではありません。ベストな退院の時期はピンポイントのこの日だ!という決定がしにくいからです。
「だいたいこの日からこの日かな~」
という感覚で退院日を決めているのが実情でしょう。決して批判をしているのではなく、それほど回復期での退院の時期の決定は難しいのです。
さらに、退院の時期を難しくしている要因として病床稼働率の問題も背景に抱えているというのが実情ではないでしょうか。
回復期リハビリテーション病院の損益分岐点と限界利益に着目した報告は少ないです。一般的に変動費の乱高下を最小限に抑えることが重要となりますが、病床稼働率はその最たるものでしょう。
・回復具合に応じて退院日を決定する
・回復だけではない、様々な要素が大きく影響している
その結果
在院日数とFIM利得の関係性が成り立つ患者と
成り立たない患者を
生んでしまっているのではないでしょうか。
FIM利得の限界は?
結局のところFIM利得に限界はあるのでしょうか?限られた日数で高い回復に到達するには1日1日が重要となります。これは医療者側の努力だけでは限界があります。
あくまでもFIMの採点は日常生活内での患者自身の自立度です。つまり、医療者側だけでなく、患者自身の「自立心」が大きく影響します。「病院は介抱してくれるところだ」という固定観念があれば自立心は養えないでしょう。FIM利得の限界は「患者教育の進展に左右される」と言っても言いすぎではないということを強調したいです。
アメリカ合衆国のリハビリ専門病院に1週間研修に行った際に感じたことが3点あります。文化的に自立心のあるアメリカの患者は
①自主訓練の時間が長い ②日常生活は何とか自力で実施しようとする ③保険期間中に入院を完結させる
の3点で日本の患者と決定的に違いがあります。アメリカでは在院日数は3週間以内、FIM利得は平均36点を超えていました。150日・180日で37点を目標値としている日本とわずか21日足らずでFIM利得36点をたたき出しているアメリカでは、比べる物差しが違いすぎるのです。
結論としてはまだまだ日本のFIM利得は限界に来ていない!
「伸びしろですね~」
と本田圭佑から指摘される日もそう遠くはないでしょう。