回復期リハビリテーション病院の高次脳機能障害は有利?

その他の実績指数向上の取り組みを考える!

ここまでのシリーズで実績指数向上の取り組みを「三本の矢」で述べてきました。基本はこの三本の矢が重要かとは思いますが、その他に考えられる取り組みを紹介いたします。

高次脳機能障害って有利?

現在の回復期リハビリテーション入院料を算定可能な入院上限日数は

脳血管障害150※高次脳機能障害の場合は180

高次脳機能障害の有無によって上限日数が異なります。そのため脳血管障害患者で同じ入院日数・同じ回復程度であったとしても実績指数に違いが生じてきます。

例を挙げてみていきます。

在院日数150 脳血管障害上限日数150 運動項目FIM利得37点 
⇒ 37点 ÷ (150/150) = 実績指数37
在院日数150 高次脳機能障害上限180 運動項目FIM利得37点
⇒ 37点 ÷ (150/180) = 実績指数44.4

上記例の患者であれば実績指数が7.4上昇しますので、高次脳機能障害の方が有利に働きます。であるのであれば、もうお分かりですよね。

高次脳機能障害の診断漏れに注意しましょう!

しかしながら厚労省は高次脳機能障害の診断を以下のように答申しています。

高次脳機能障害の診断の乱立にはいずれメスが入るでしょう!

適切な診断の根拠を厚労省の答申を参考にしていかなければいけません!

切磋琢磨を取り入れる

リハビリテーション実績指数向上への取り組みは病院幹部のみでは不十分です。現場で実践してこそ、実績指数の向上が堅持できるのです。付け焼き刃ではなく、継続していける風土作り。

そのためには現場に実績指数の見える化を図りましょう!

回復期リハビリテーション病棟が複数病棟ある場合は、見える化によって競争意識、切磋琢磨を狙いましょう。

もうすでにやっているという病院もそのやり方を見直してみる必要があります。

実績指数の見える化で何を見せるのか?以下の項目は見せた方が良いかと考えます。

①前月入棟患者の除外・未除外の一覧表
②前月退棟患者の実績指数と予測実績指数の乖離
③病棟毎orチーム毎のFIM利得・在院日数・実績指数のグラフ(前月分)
④自病棟の実績指数の推移グラフ(年間)
⑤自病棟の目標

どのような目的で見せていくのかを以下にまとめてみます。

①前月入棟患者の除外・未除外の一覧表

どの患者が除外され、どの患者が除外されなかったのかを一覧できるようにする。

この2点を見える化する時の注意点を先に述べます。

患者に強弱をつけるという意味ではない!

ということを押さえておかないと、「除外したから実績指数に関係ないのでゆっくりの入院生活でよい」と勘違いするスタッフが出てきます。

さらにFIM利得のUPに関しても、除外・未除外関係なく全患者に実践するはずです。

しかし実際は綺麗ごとだけではないはずです。

FIM利得を向上するためには入院生活を自立に近づける必要があります。そのためには病棟スタッフの時間的余裕が必要となりマンパワーが必要となります。

限られた人的資源を有効活用する時に強弱を使って関わります。

①はそのような時に必要となる情報です。

②前月退棟患者の実績指数と予測実績指数の乖離

入棟月の翌月レセプト請求までに除外選定を行いますが、除外の有無にかかわらず実績指数の予測をしておく必要があります。

在院日数は○日~○日の間

FIM利得は○点~○点の間

その結果、実績指数はMIN○~MAX○、というような予測です。

この予測と退棟後確定した実績指数がどの程度乖離したのかをチームで確認し、その原因をチームで話し合うことによって今後の除外選定の予測精度が高まってきます。

③病棟毎orチーム毎のFIM利得・在院日数・実績指数のグラフ(前月分)

自病院に複数病棟回復期リハビリテーション病棟がある場合は、あえて病棟間の競争意識を駆り立てる工夫も必要かと考えます。

競争意識だけでなく、上手くいっている取り組み等も見える化することで共有する意識が芽生えます。

「競争」「共有」をうまく活用するということです。

④自病棟の実績指数の推移グラフ(年間)

また自病棟の年間推移を見える化することで、直近の患者への関わり方の見直しを行うことができ、質の担保が図れます。自病棟のデータから刺激を受ける効果もあるでしょう。

⑤自病棟の目標

良いチームとはチームとしての方向性が明示されその方向性に向かって前進しているチームかと考えています。まずは目指す方向性を示すことが重要です。

必要であれば数値目標を示すことも大事ですが、ノルマとして受け取られないようなメッセージを加えると正しく伝わるでしょう。

まとめ

2020診療報酬改定から見える回復期リハビリテーションの在り方を考えるシリーズ⑨まで述べてきました。Lastのシリーズ⑩は今後の改定の流れを述べていきます。