第三者評価によって回復期リハ病棟のアウトカムにメスが入るのか~全国リハ医療関連団体協議会の要望書~

2016年度診療報酬改定でリハビリテーションのアウトカムである『リハビリテーション実績指数』が回復期リハ病棟入院料の施設基準に盛り込まれ、リハビリの効果が評価軸の1つとなりました。

この『リハビリテーション実績指数』は「より早くより高く」をキーワードにした計算式で成り立っており評価指標はFIMを用いています。

この『リハビリテーション実績指数』に対して全国リハビリテーション医療関連団体協議会は要望書を厚生労働省に提出しました。

全国リハビリテーション医療関連団体協議会の要望書

(2021年10月28日の記者会見より抜粋)

少なくとも回復期リハ病棟入院料1の評価体系の中に
FIM評価が正しく行われている体制の整備を
第三者評価によって確認してはどうか。

前回の診療報酬改定の時も第三者評価の必要性は問われていましたが、はたして2022年の改定で盛り込まれるのでしょうか?

全国 リハビリテーション医療関連団体協議会の構成を以下にまとめます。

リハビリの質向上とそれに見合う報酬上の評価を目指す組織と位置付けられています。

【全国リハビリテーション医療関連団体協議会】
・日本リハビリテーション医学会
・日本リハビリテーション病院・施設協会
・回復期リハビリテーション病棟協会
・全国デイ・ケア協会
・日本訪問リハビリテーション協会
・日本リハビリテーション看護学会
・日本理学療法士協会
・日本作業療法士協会
・日本言語聴覚士協会

この要望書が出される背景には何があるのか?

先に述べたように『リハビリテーション実績指数』は「より早くより高く」をキーワードとしています。

すなわち在院日数の短縮FIM利得の向上が求められています。

そのうちFIM利得の向上に対して評価操作がされているのではないかという懸念がいたるところで言われています。

回復期リハビリテーション病棟の機関誌の中でも指摘されているため、自団体の中でも大きな問題として取り上げられています。

その評価操作とは「入棟時の患者状態(入棟時FIM)を低く評価することで、退棟にいたるまでのADL改善度合いを大きく見せているのではないか」という点です。

本来は自院のレベルアップによって回復具合を高める自助努力が求められるFIM利得ですが、退棟時のADL状態を向上させるには限界があるため、恣意的に入棟時のADL状態を低く見積もる病院があるのではないかということです。

したがって自院のチェックのみでは恣意的操作がされ、モラルハザードが生じるということから第三者評価の必要性が求められ始めたのです。

さらに根拠付けるデータとして、日本医療機能評価機構の病院機能評価認定を受けている回復期リハビリ病棟と、受けていない回復期リハビリ病棟を比較したところ、2020年度改定前後の入棟時FIMの低下率は非認定病院で大きいことが示されました。(認定病院でマイナス2%,非認定病院でマイナス7%)

非認定病院では、同じ入院時の日常生活機能点数に対する入院時運動FIM得点が有意に低く評価されていることが明らかになったのです。

とは言うものの、認定・非認定ともに入棟時FIMの点数が下がっています。

このデータから「非認定病院ではFIM評価を正しく行ってない可能性がある」ということで、第三者評価の候補として日本医療機能評価機構の病院機能評価認定が挙げられたという経緯があります。

第三者評価によって変わるのか?

第三者評価の候補として挙げられている日本医療機能評価機構の病院機能評価認定ですが、3rdバージョンの解説集をみてみるとFIMに限局した項目は見当たりません。

全体的な統制や診療の進め方、マニュアルの定着具合い等は解説集から読み取れるのですが、病院機能評価ではFIMが正確に評価されているのかは診られないのです。

全国リハビリテーション医療関連団体協議会の近藤国嗣・報酬対策委員会副委員長(東京湾岸リハビリテーション病院長)は「病院機能評価においては、受審病院が正しい評価を病院の組織として行っているかについても調査・評価する。」と述べられています。

たしかに「正しい評価が病院の組織としてなされているのか」は評価項目にありますが、1つの評価指標であるFIMが適切に評価されているのかという具体的な中身までは診られません。

厚労省は2020年度の診療報酬改定で第三者評価を取り入れる前段階として「患者の視点による適正性の確保」を導入しました。

これは評価結果を患者・家族に提示することで、患者・家族にチェックしてもらおうというシステムです。

しかしながら医療者が示すデータや点数に対して疑義を申し出る方は少ないのが現状です。

このFIM点数のダウンコーティングは第三者評価によって解決されるのでしょうか?

私は「いたちごっこ」のような気がしてなりません。

また、ダウンコーティングがなされているという憶測で物事が進んでいくことにも疑問を感じています。病院には多くの職員が働いており、組織的に入棟時FIMの点数を下げるような取り組みをしていれば内部告発も起こり得ます。

私は過去のFIM点数の付け方が間違っていたのではないかと推測しています。

ご存知のようにFIMとは最も低い点数をつけます。ある時間は軽介助でできても、ある時間になると中等度介助になってしまうのであれば、点数は中等度介助で算出します。

回復期におけるFIMが浸透し、今までBIでADLを評価していた病院もFIMにシフトしていき、正確に低い点数で付けられるようになってきた結果、以前と比べると入棟時FIMがダウンコーティングされているかのように見えているのではないでしょうか。そう信じたいですね。

病院機能評価の認定病院は増えていくのか?

コロナ禍のため新規受審病院は以前のペースよりもダウンしているようです。

しかしながらこのような要望書が出されてくると、先を見据えて受審の準備をしていく病院は増えていくのではないでしょうか。

まだ準備していない病院は、病院幹部に上申してみてはいかがでしょうか。

病院機能評価機構の認定が適切なFIM評価に直結するとは思いませんが、病院全体のレベルアップにつながることは間違いありません。

診療報酬改定に振り回されることなく、自院の診療レベルを上げていきたいですね。