2021年4月の回復期リハビリテーション病棟協会機関誌が発刊されました。
この中に『2020年度全国実態調査報告』が6ページでまとめられています。
調査対象病院の57.7%が回答しており、6割近い有効回答率のデータです。
以前に同協会は2020年度の変化を8点から予測していました。
下記の記事から参照できます。
新型コロナウイルス感染症の影響によって、医療提供の内容も大きく変化した1年となりました。
今回は回復期リハビリテーション病棟の死活問題である『病床利用率』についてまとめていこうと思います。
病床利用率の推移
調査日:2020年8月25日
1病棟当たりの平均病床数:46.0床
平均在院日数:69.2日
病床利用率:85.2%
2010年からの病床利用率の推移は以下のようになっています。
2年おきに病床利用率が下がっているのは、診療報酬改定の年と一致しており、少なからず回復期リハ病棟の病床利用率は診療報酬の影響を受けているのが見て分かります。
しかもその病床利用率の2年おきの低下は右肩下がりになっています。
そして2020年度は85.2%
居酒屋や商業施設の利用率は前年比から大きく下がっていますが、回復期リハビリテーション病棟も下げ幅で言うと決して安心できるものではなく、大きなダメージを受けている数値となっています。
しかしながら80%台前半の病床利用率もあるのではないかと思っていただけに想定範囲内の数値となりました。
ただ本データは2020年8月時点での数値です。
第3波が起こった12月~2月にかけては反映されていない病床利用率です。
実際は80%台前半もあり得ますね。
発症~入棟までの日数
2020診療報酬改定で、回復期リハビリテーション病棟への転棟条件であった「発症からの日数」は撤廃となりました。
それを受けて2020年の実態調査では、61日~90日、91日以上の2点が追加されました。
61日以上かけて回復期リハビリテーション病棟に入棟してくる割合はどの程度なのか気になるところですね。
61日~90日 3.7%
91日以上 3.0%
発症からの日数の撤廃を活用して回復期リハビリテーション病棟に入棟した割合は6.7%となっています。
これを多いと捉えるのか少ないと捉えるのか。微妙な数字ですね。
また、発症から14日以内は28.8%と増加しています。(前年より1.5%UP)
2013年の19.0%からは約10%増加しています。
一方15~30日は41.9%と減少しています。(前年より2.1%DOWN)
発症から入棟までの日数の推移は以下の通りです。
2019年の24.2日から比べると大幅増の29.5日です。
新型コロナウイルス感染症の影響で病床利用率は下がっていました。
空き病床がある分、早めに急性期から受け入れているのかと思いきや、回復期リハビリテーション病棟に入棟するまで約1ヶ月かかっています。
この29.5日という大幅増は「回復期リハビリテーション病棟への転棟条件であった発症からの日数の撤廃」が影響しているのでしょうか?
この発症からの日数の撤廃の恩恵を受けている疾患は脳血管疾患のようです。
以下のデータをご確認ください。
運動器疾患は61日以降の入棟が4.0%に対して、脳血管疾患は約1割の方が61日以降の入棟となっています。
この1割の方にとっては、リハビリテーションが受けられるということで恩恵を受けた形になります。
しかし、これは経営的に避けられてきた悪しき習慣であると考えます。
発症からの日数撤廃は吉?凶?
ご周知の通り、回復期リハビリテーション病棟は対象患者が8割以上入院していなければならないと定められています。
言葉を変えると2割を超えなければ、回復期リハビリテーション病棟対象外の患者を入院させることができます。
しかし回復期対象外であれば約2万円の入院料が約8,000円と収入減になります。
そのため回復期リハビリテーション病棟対象外ということで、受け入れを断っていた回復期リハビリテーション病棟が散見されていました。
厚労省は発症からの日数を撤廃することによって、従来では回復期リハビリテーション病棟対象外に該当していた患者を回復期リハビリテーション病棟対象内としました。
わずか6.7%ですが、61日を超えた患者も受け入れられるようになり、患者もハッピー、経営的に病院もハッピーになったのではないでしょうか?
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、算出されたデータは突発的なものである可能性は高いです。
2021年も新型コロナウイルス感染症の影響は続きます。
算出されたデータに一喜一憂ぜすに最良の医療の提供体制を確保していきたいですね。
そのためにはコロナに負けず、医療職を応援してください!