2020年診療報酬改定は「働き方改革改定」といっても過言ではない程、働き方改革を中心とした改定になりました。日本人の働き方は真面目過ぎて、もっと残業を減らしましょう、医師の負担を軽減しましょう、医療関係者の働き方にゆとりをもちましょう、という厚労省からのメッセージだと理解しました。
今回は「医師の働き方改革を推進するためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」についてまとめていきたいと思います。医師の業務を他職種にシフトしていくことで、効率的な医療展開と医師の働き方改革推進を目指した検討会です。
たしかに医師じゃなくてもよくない、っていうものありますよね。医師の指示待ちで無駄な時間を過ごすなんてこともありますよね。これでは医療提供の効率化が図れません。一部シフトしていくことで、看護師さんも無駄な時間を過ごすことなく、働き方が改善されることもあるのではないかという内容です。※無駄な時間という表現はただの私見です
第7回医師の働き方改革を推進するためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会
令和2年12月11日に第7回医師の働き方改革を推進するためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会が行われました。
令和元年10月23日に第1回が開催され、以下のようなスケジュールで検討が行われてきました。
検討内容としては、医師が担っている業務内容を他職種に移行した時の「法的問題」や「安全性」について話し合われてきたようです。
診療の補助について
原則として、医師の診療の補助が可能な職種は「看護師」「診療放射線技師」「助産師」「薬剤師」となっており、この職種は業務独占とされています。
その他の職種は看護師の業務独占を一部解除する形で、診療の補助の一部を実施することができるとされています。したがって診療の補助においては、「看護師か看護師以外か」と言い換えることもできます。
法律で言うと「保助看法の規制解除」という形で、他職種は診療の補助が特例的に認められていることになります。
また、他職種が実施している診療の補助に当たらない業務は保助看法の適用外となっています。理学療法士で言えば、転倒予防の指導等などが該当しますし、義肢装具士で言えば、義肢装具の製作が該当します。
現在の問題点の一例「救急外来における検査等について」
このように診療の補助は「看護師か看護師以外か」で分けられますが、現在の問題点を「救急外来における検査等」で一例を挙げます。
現在: 採尿など侵襲性を伴わないものは医師の診察前に 実施可能であるが、採血など侵襲性を伴うもの は医師の確認なく実施することは不可能
侵襲性を伴うものは医師の診察が終わらなければ実施できませんが、医師が診察する前に血液データ等の重要な情報が揃っている方が迅速な対応が可能ではないかという課題も挙がっています。
しかし侵襲性を伴う行為は、医師法第20条の無診察治療等の禁止が問題となってきます。
安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律第12条では、治療行為と医学的検査が並列で扱われている例があることを述べています。そこで、医学的検査の採血は医師法第20条の「治療」に当てはまらないと解釈されます。
特定行為研修修了者配置による影響
看護師が特定行為研修を修了し業務に当たることで、以下の4点に有意な差が生じたとまとめられています。
①医師による平均指示回数692回/週⇒200回/週 ②19時以降の医師の平均指示回数77回/⇒21回/週 ③病棟看護師の月平均残業時間401.75時間/月⇒233.25時間/月 ④医師1人当たりの年間平均勤務時間2390.7時間⇒1944.9時間
大幅に減少しています。この理由として考えられることは、特定行為研修修了者が医師の指示を都度依頼せずに実施できるため、業務効率があがったことが考えられます。ヒアリングでは特に抗生剤等について効率化が図れたとされています。
研究報告として、心臓血管外科に2名の特定行為研修修了者(21区分修了)を配置した場合の活動内容をまとめています。1ヶ月で28の特定行為を計281件実施しています。
特定行為研修の経緯
平成27年10月「看護師の特定行為に係る研修制度」施行 特定行為区分単位での研修
・制度開始から3年経過しても修了生は約1000人程度で、目標とする修了生10万人は届かない
・医師の働き方改革等のために特定行為研修を修了した看護師を増やすことは喫緊の課題
この2点を踏まえ、より研修を受けやすいようにパッケージ化がすすめられた
平成31年4月厚生労働省令の改正 「在宅・慢性期領域パッケージ」 「外科術後病棟管理領域パッケージ」 「術中麻酔管理領域パッケージ」 の3パッケージ化
令和元年10月厚生労働省令の改正 「救急領域パッケージ」が新たに追加
看護師以外の職種
医師からの業務シフトを特に推進する内容として各職種別にまとめられています。
また医師以外の職種の業務移管についてもまとめられていますが、本記事では一例を紹介します。
病棟入院時の患者評価として、重症度や医療・看護必要度等は看護師が実施している主な職種ですが、理学療法士にも移管可能であり、本検討会では推進しています。
看護師だから、理学療法士だから、薬剤師だからという固定観念ではなく、働き方改革というトレンドに合わせる形で柔軟に業務内容を見直していかなければ、時代にそぐ合わない専門職になってしまいます。このパラダイムシフトこそが本当の意味でのシフトなんでしょうね。
働き方改革を本気で考えたら、売り上げがのびた話って興味深いですよね。勉強します。