令和2年11月16日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、通所リハビリテーションの報酬を「月単位包括報酬」に移行する案が議論されました。当面は現在の日単位報酬と選択できる形になるかとは思いますが「包括報酬」という表現はドキッとした事業所も多いのではないでしょうか?
月単位報酬体系のイメージ
2015年度の介護報酬改定から「漫然とADLの維持・向上を目指すのではなく、医師の関与を明確にし、利用者の意向を踏まえた活動・参加への取り組みを評価していく」方向が明確にされ、2021年度改定でもこの方向に沿った見直しが行われることになります。
この「活動・参加への取り組み」推進を強化するために
・リハビリ機能・事業所の体制 ・活動・参加に対する取り組み ・利用者の心身機能
などを評価軸に据えた「包括的な評価による月単位報酬体系」を構築する方向が厚労省老健局老人保健課から示されました。
3つの視点による報酬をイメージされているようです。
①介護度別の基本サービス費
②事業所体制による加算・減算
③利用者状態による加算・減算
【強化型】上記の取り組みを積極的に行う 【加算型】上記の取り組みを相当程度行う 【通常型】上記の取り組みが途上段階 ※いずれも仮称
の3類型をイメージされています。介護老人保健施設の「2018年度改定前の報酬体系」に似たイメージです。傾斜的な報酬と考えられます。
この傾斜的な月単位報酬体系と現在の日単位報酬体系は、当面は選択できるようになるようですが、健康保険組合連合会理事の河本滋史氏は「経過措置を設けて将来的には『1か月単位の包括報酬』に一本化していくべき」と提案しています。
リハマネ加算の組み換え
リハビリテーションマネジメント加算については、次のような大きな報酬体系の組み換え・見直しが行われる見込みとなっています。
加算Ⅰの算定率は訪問リハでは8割強、通所リハでは9割弱となっていることから「訪問・通所リハ事業所全体に求められる必須事項」に位置付けを見直す内容となっています。
①加算Ⅰで求められている「医師による詳細な指示」や「計画的なリハビリ実施」などを全体の要件とし基本報酬に組み込む⇒加算Ⅰ廃止
②リハ計画に関する利用者への説明などを要件とする「加算Ⅱ・Ⅲ」について「VISIT・CHASEへデータを提出し、フィードバックを受けPDCAサイクルを推進する」ことを要件化する
③VISITへのデータ提出等を評価する「加算IV」は廃止
VISIT・CHASEに関しては、介護現場からの意見として「データ入力の負担が大きい」との声が多く挙がっており、早急な改善が求められています。必須項目と任意項目に分ける負担軽減案も出されていますが、委員からは「介護現場にはICTが普及しておらず、データ入力が大きな負担となっている。加算Ⅱ・Ⅲのデータ提出要件化には3年度程度の経過措置を設け、その間ICTの導入支援を行うべき」とも提案されています。
利用期間によるADL改善の差は?
通所リハ利用期間の中央値は347日となっています。この347日を起点とし、347日以下と347日以上の利用期間でADL改善割合を比較すると有意差なしという結果になっています。
中央値を前後してもADLの変化に有意差はなかったことから、月単位報酬体系はどの利用期間でも一律の報酬体系になりそうです。
まとめ
11月になり、介護報酬改定情報が出てくるようになりました。最終的にどの形になるのかはまだ予測段階ですが、事業所にとっても利用者にとっても温かい改定になることを祈ります。
介護保険分野で勤務されている方々は、この新型コロナウイルス感染症による影響を大きく受けています。プラス改定にならない見込みですが、なんとかこの難局を乗り切れるように陰ながら祈っています。
頑張れ!介護分野で勤務する方々!