リハビリ関連3団体の署名活動から見える先行きの暗さ~不安を煽る署名活動ではなく、希望を与える訪問リハステーション化を~

2021年介護報酬改定に向けて、11月16日の介護給付費分科会では「訪問看護については、一部の事業所でリハビリテーション専門職の配置割合が高いことを指摘し、具体的な基準として、看護職員の配置割合を6割とする」方針が示されました。

看護職員の配置6割という数字に敏感に反応したのがリハビリ関連3団体です。翌日の11月17日に3団体連盟の声明文を出しました。この声明文に対して「3団体の方針が的外れではないか」という記事をまとめました。詳細は以下からご覧ください。

大丈夫か?リハビリ3団体~訪問看護ステーションにおける人員配置基準の新設に関する声明文~ | 『小手先より五手先』 (kokoroniyutorio.com)

声明文のみならず、リハビリ関連3団体は各々のHP上にて、上記の人員配置基準の新設に対する反対の署名活動の協力を呼びかけました。今回はその緊急署名活動についてまとめていきます。

緊急署名活動の添付資料~職を失う療法士とリハを失う利用者~

リハビリ関連3団体は反対署名活動の添付資料として、以下のような資料を作成し、その影響の大きさを2点から訴えています。

①療法士の雇用が失われる点 ②利用者のリハビリ難民が増える点

例では看護職員5人、療法士5人の事業所を挙げています。看護師5人が在籍している事業所では療法士は3人まで在籍できます。この場合、在籍8人中看護師5人ですので、62.5%となり基準をクリアします。この事業所では療法士2人が職を失う形で示されています。

さらに職を失った2人の療法士が担当していた約30人(1人当たり15人)の利用者が、リハビリを受けられないリハビリ難民になるとされており、全国規模で見ると約5,000人の療法士が職を失い、約75,000人(5,000人×15人)の利用者がリハビリ難民になるとされています。

はたしてリハビリ関連3団体が添付で示したように、約5,000人の療法士が職を失う状況になるのでしょうか?

厚労省は療法士の職を奪いたくてこのような人員配置案を出したわけではありません。むしろリハビリ関連3団体が率先して、職を失う不安を駆り立てているといった形でしょうか。厚労省が終始指摘しているのは「訪問看護という位置づけなのに看護職よりもリハビリ職の方が多い現状」であるということです。

「訪問看護」という位置づけがあるにもかかわらず、リハビリ関連職種に埋め尽くされている事業所を指摘しているのです。7割でもなく8割でもなく看護職配置6割と言っています。「訪問看護なので若干は看護職の方が多いですよね」と正論を厚労省は言っているのです。おそらく厚労省はこのようなイメージを持たれているのではないでしょうか。下図をご覧ください。

厚労省が指摘しているのは全国のわずか4.7%+@の事業所です。この4.7%の事業所は理学療法士等の従事割合が60%を超えています。20%未満にあたっては66.6%となっています。適切な配置を行えば、職を失うことはありません。(地域差加味していません)

緊急署名活動の添付資料~リハ職の方が多い事業所の例~

原則、全国一律の報酬改定ではありますが、一部地域補正を考慮されているものもあります。添付資料のように地域状況は異なるものであり、全国一律の報酬改定の煽りを地方と呼ばれる地域が受けるのは公平性に欠けるかと思います。下の資料のような地域は一生懸命に訪問リハビリを提供しています。

この地域差を解消するのが「訪問リハビリステーション」ではないでしょうか。いつまでも「訪問看護」の枠組みに収まるのではなく、訪問リハビリとしてステーション化できるように持っていくのが、リハビリ関連3団体の大きな役割かと考えます。

まとめ

今回の厚労省からの指摘では、訪問看護と訪問リハビリの役割の違いを示されています。今リハビリ関連3団体が行うべき活動は署名活動という後手後手の対応ではなく、訪問看護と訪問リハビリの役割の違いを前面に打ち出した先手先手の対応かと思います。

この緊急署名活動でどの程度の署名が集められるのでしょうか。添付資料は不安を煽る資料のように作られており、現実を投影されている資料ではありません。不安を煽る戦略ではなく、希望を与える戦略を取らなければ、リハビリ関連3団体の先行きは明るくならないのではないでしょうか。希望を与える戦略とは「訪問リハビリステーション」です。

頑張れ!リハビリ関連3団体!

希望を与える戦略をとらなければ。