大丈夫か?リハビリ3団体~訪問看護ステーションにおける人員配置基準の新設に関する声明文~

2020.11.16に第193回社会保障審議会介護給付費分科会が開催されました。多くの資料が出された中、新たに数値が記載されたものがありました。

「訪問看護ステーションにおける人員配置基準」についてです。これまで厚労省は、訪問看護ステーションの理学療法士等の割合について指摘してきましたが、今回の介護給付費分科会で具体的な割合の数値が出されました。その数値を受けて、リハビリ関連3団体は2020.11.17付で共同で声明文を出しています。本日の資料で、かなり新しい話題かと思いますのでじっくりご確認ください。

訪問看護ステーションにおける人員配置基準

役割を踏まえたサービスが提供されるようにする観点から「訪問看護ステーションの看護職員が指定訪問看護の提供に当たる従業員に占める割合を6割以上とする要件を設けてはどうか」という案が出されました。これは訪問看護という位置づけなのに、理学療法士等の占める割合が高くなっている事業所に対する警鐘かと思われます。

6割という数字に着目しがちですが、この論点で重要な点は赤枠で示した部分青枠で示した部分であることを見誤ってはいけないかと思います。

理学療法士等によるサービス提供の状況

他の介護サービス等との役割分担

この2点を踏まえた上で、6割以上という数値が出されているからです。では、この2点を根拠資料を基に見ていきます。

理学療法士等によるサービス提供の状況

上段は訪問看護で理学療法士等が提供している内容を示しています。

下段は病院等が提供している訪問リハビリテーションの内容を示しています。

見てお分かりのように、訪問看護による訪問リハ≒病院等による訪問リハは、ほぼ同じ内容になっています。理学療法士等が提供する内容は、場所を問わず同じ内容を提供しています。

他の介護サービス等との役割分担

一方、看護職員が提供する訪問とリハビリ職が提供する訪問の違いを見ていくと、その役割の違いが明らかになっています。

「看護職員とリハビリ職員では訪問の役割が違う」

「だから役割を分担するべきだ」

この流れはリハビリ関連3団体が要望している訪問看護から切り離して訪問リハビリステーションを作る絶好のチャンスではないでしょうか。

・場所を問わずリハビリ職が提供する訪問は一定である。

・看護職とは明確に役割が異なるため、訪問リハビリに関しては訪問看護と切り離して考えるべきだ。

なのに、リハビリ関連3団体が出した声明は的外れな内容でした。

リハビリ関連3団体の声明文

当初から要望していた訪問看護から切り離すチャンスがあるにもかかわらず、焦点が6割以上という人員基準に引っ張られてしまっており、的外れな声明文となっています。

知識がない私でも、「訪問看護」と言われているのに理学療法士等が8割以上を占める事業所があることには違和感を覚えます。いつまで訪問看護の枠の中に居座り続けるつもりなのでしょうか。さらに「看護職員の代わりに訪問している」とリハビリ関連3団体が声明文で明言していることにも驚きを隠せません。むしろ、看護職員との違いを明確に示していくはずの3団体が、正式な文章で「看護職員の代わりに訪問している」と明言している現状は、現場のリハビリ関連職の方々は憤ってしまうのではないでしょうか。

また、当声明文では「訪問看護ステーションの看護職員が指定訪問看護の提供に当たる従業員に占める割合を6割以上とする要件になるとリハビリ関連職の職が失われる」と述べています。私は職が失われる危惧よりも、訪問看護から切り離せるチャンスと思っています。むしろ職を増やすチャンスではないでしょうか。

このようなリハビリ関連3団体の姿勢では、当分訪問リハビリステーションの実現は難しいと言わざるを得ません。

頑張れ!リハビリ関連3団体!

目を覚ませ!リハビリ関連3団体!

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その後リハビリ関連3団体から署名を求める活動が。

以下からご確認ください。

リハビリ関連3団体の署名活動から見える先行きの暗さ~不安を煽る署名活動ではなく、希望を与える訪問リハステーション化を~ | 『小手先より五手先』 (kokoroniyutorio.com)