これまで介護部門における利用者・家族等からのハラスメントをまとめてきました。「施設管理者の把握状況と実際との乖離」や「ハラスメント防止に対する取り組み」等、調査報告書のデータから分かる部分をまとめています。
↓ 過去記事
ハラスメントが発生する原因
ハラスメント防止対策を講じる上で「原因分析」は非常に重要な視点かと思います。介護部門での利用者・家族等からのハラスメントはどのような原因で起こっているのでしょうか。大きく3つのポイントで分類分けしてみます。
利用者・家族等のモラルやストレス
ハラスメントが発生する原因として「利用者・家族等のモラルが低下している」割合は20~30%となっています。また同じような利用者・家族等の問題として「ストレスが溜まっているから」の割合は20~40%となっています。上記結果は施設管理者が回答している結果となっており、一定数、利用者・家族等に発生原因があると考えているようです。
サービスの理解不足
「低く見られている」「サービスへの過剰な期待」「サービス範囲の理解不足」等のサービスへの理解不足が原因と感じている割合は40~60%となっています。講義の意味では利用者・家族等の問題かと思いますが、サービスへの理解を十分促せていないと捉えるとサービス提供側の問題も含まれるかと思われます。サービスへの過剰な期待があると、十分な結果が得られず、不信感が生まれハラスメントにつながる恐れがあります。サービス開始前にサービスの限界を十分ご理解いただいた上で、開始する等の取り組みを行っているかと思います。それでも40~60%はサービスへの過剰な期待からハラスメントが生まれていると感じている状況になっています。
サービス提供側の事情
サービス提供側の職員確保が困難で、長期間同じ職員が固定されたり、異性介助の状況が原因でハラスメントを発生していると感じている割合は10~30%となっています。特に異性介助はセクシャルハラスメントに繋がる可能性もあることから、各種別サービスでは考慮しているかと思います。男性介護士も増えている状況ですが、女性介護士しかいない状況では、人的環境面での工夫が取りずらく、施設管理者も頭を悩ませていることでしょう。
過去にハラスメントを受けたことがある割合
上記のような原因でハラスメントが発生しています。「利用者・家族の問題」「サービス理解の問題」「環境の問題」によって防ぐことが出来なかったハラスメントも存在しています。介護部門で勤務されている方々のうち、何割くらいの職員が、今まで過去にハラスメントを受けているのでしょうか。
利用者から受けたことがある割合 約50%(2人に1人)
家族等から受けたことがある割合 約20%(5人に1人)
この数値を多いとみるのか。少ないとみるのか。どちらにしても2人に1人がハラスメントを受けたことがあることは事実であり、介護部門の勤務のたいへんさが見て分かるデータとなっています。
ハラスメントを受けて休んだことがある割合
このように介護部門で勤務されている方々は、2人に1人がハラスメントを受けたことがある環境で仕事をしています。ハラスメントは心に大きなダメージをもたらします。時にはそのダメージが回復する間もなく、次の仕事の時間が迫ることもあります。そのダメージは蓄積されて、最悪の場合、休職や退職となってしまいます。時には仕事を休みたくなる日もありますよね。ハラスメントを受けて休んだことのある割合はどの程度でしょうか?
真面目。真面目すぎる。なんと、ハラスメントを受けて休んだことのある割合は1~2%程度。通所介護においては0%となっています。ハラスメントを受けたことがある割合は50%程度だったのに対して、休んだことのある割合は1~2%。なんて真面目なんだ、と思ってしまいます。奉仕の心で働かれていることにリスペクトです。一方、カウンセラーとしては、たまには息抜きも必要ですね、と真面目すぎるがゆえに潰れないかが心配になります。
まとめ
これまで介護部門のハラスメントをまとめてきました。調査報告書をまとめていく中で
・管理者は実情を把握できていない ・管理者は実情の把握は待ちの姿勢である ・利用者だけではなく家族等からのハラスメントもある ・家族等からのハラスメントは精神的暴力が圧倒的に多い ・ハラスメントを相談できる外部機関は充実していない ・ハラスメントを相談しても無駄だと感じている ・ハラスメントを受けて仕事を辞めたいと思っている ・2人に1人がハラスメントを受けたことがある ・ハラスメントを受けても仕事は休まない
という状況が分かりました。介護部門で勤務されている方々は辛い仕事かと思います。もちろん辛いばかりではなく、やりがいを多く感じられる職務内容であることも理解しています。しかしながら、利用者・家族等から受けるハラスメントを耐えながら勤務している現状には頭が下がります。なんとかこの状況を改善していけるような手助けがしたいと思っています。
頑張れ!
介護部門で勤務されている方々!