正直さは時に不誠実に見られることもある

先日このようなスタッフがいました。

私は朝出勤しコーヒーを飲みながら始業時刻まで頭をすっきりさせていました。始業時間5分前に机の整理をして、今日一日の仕事の量や配分を考えていると始業時間になりました。

すると、いつもいるはずのスタッフが1名いません。始業時刻になってもスタッフの1人が出勤していないのです。周りのスタッフも1名いないことに気づき、携帯電話に電話をかけていました。

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トゥルルル。トゥルルル。

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5コールくらいでしょうか、つながったみたいです。

電話越しから聞こえる声から内容を想像すると

「Aさん、もう始業時間過ぎているけど今どこにいるの?」

Aさんに電話を掛けたのはAさんの直属のB先輩です。

「すみません。今、家です。今から行きます。」

「えっ?まだ家なの?今からだとどのくらいで着くの?」

「えーと、30分・・40分くらいで着くと思います。あのー、い、急いでいきます。」

「慌てなくていいから気を付けてきてね。」

電話のやり取りをスタッフ全員が聞き入っていました。

Bさんは受話器を置くなり

「声が寝起きだったわ。これは寝坊かな。」

でしょうね。その場にいたスタッフ全員がそう思いました。

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結局50分後にAさんは出勤し先輩のBさんにこう言っていました。

「すみません。起きてはいたんですが時間を間違えたみたいで。」

「ん?どういうこと。寝坊じゃないの。」

「はい。起きてはいたんですが・・・あのー。時間を見間違えていました。」

見る見るうちにBさんの表情が強張っていくのが分かりました。

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本当のところはAさんしか分かりません。起きていたのかもしれないし、寝坊かもしれないし。もしかしたら本当にAさんは起きていて時間を見間違えたのかもしれません。それを正直にB先輩に伝えることが「誠実」だと思ったのでしょうか。

しかしBさんが感じたのは「あなたが起きていたかどうかよりも、時間通りに出勤できなかったことを謝りなさいよ!」ということでしょう。Bさんからすると「起きていた」ことを「言い訳」として捉えたのではないでしょうか。

Aさん正直につたえることが誠実さだと思い伝え、Bさんは時間通りに出勤できなかったことをまず謝らなかったというAさんの不誠実さを感じ取ったのです。

コミュニケーションのすれ違いはこのような部分から生まれるのでしょう。

「自分は正直に言ったのに。」

「なんで言い訳からするのよ。不誠実だわ。」

正直さは状況によっては不誠実に見られることもあります。このケースで重要だったのはAさんが起きていたかではなく、時間通りに出勤できなかったという事実です。出勤できなかったことをまず謝罪しなかったAさんの順番間違いが生み出したすれ違いです。

そしてBさんも「きっと寝坊だ」と決めつけていた先入観があったから、言い訳として捉えてしまったということも忘れてはいけません。だからと言って私はどちらも責めません。

Aさんには「正直さ」

Bさんには「寛大さ」

ねぎらいます。

例えばBさんに対しては

「Bさんの電話対応、見習う点がありました。遅刻したAさんに電話越しで“気を付けてね”と言えるBさんの寛大さ・優しさに心が和みました。」と伝えるでしょう。

その上でAさんBさんの間に溝を作らないために、

Aさんには報告の順番間違い

Bさんには決めつけの先入観があったかもしれないね。

と添えます。

たかが寝坊で大事な人間関係を壊してほしくありません。

繰り返しますがたかが寝坊です。

たかが寝坊と思えるようになれば無敵です。以前は「寝坊なんてあるまじき行為」とまで思っていた私が「たかが寝坊」と言えていますので、そこそこ説得力はあるのかなと思います。※社の命運を賭けたプレゼンの場での寝坊では「たかが寝坊」とはさすがに言いませんけど。

お互い大人なので自分の行動の振り返りはすぐにできます。その時は間違った行動や感情になったとしても振り返りができればOK。 完璧な人間なんていませんから。私も電話越しで聞いていた時寝坊だと決めつけちゃってましたから(笑)